人生観が変わるような小説に出会ったことはありますか。
ビジネス本や自己啓発本のようなジャンルでなくても、今まで当たり前だった人生観を壊してしまうような小説がたくさん存在します。
その中でも一生に一度は読むべき小説、5冊をご紹介します。
- 『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』 喜多川 泰
- 『傲慢と善良』 辻村 深月
- 『博士の愛した数式』 小川 洋子
- 『山女日記』 湊 かなえ
- 『恋文』 連城 三紀彦
読み始めるとあっという間に世界に引き込まれてしまう魅力的な作品ばかりです。
どんな本を読んだらいいか迷っている方はぜひ参考にしてください。
一生に一度は読むべき小説5選
『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』~偶然出会った、たくさんの必然~
喜多川泰さんの青春と成長を描いたロードムービー小説です。
2010年にサンマーク出版から出版されています。
2013年に映画化され、2018年にはミュージカルも上映されました。
◆あらすじ◆
主人公の秋月和也は、友達についたささいな嘘がきっかけで熊本県から東京ディズニーランドに一人で行くことになります。
しかし、度重なる不運で帰りの飛行機に乗りそびれてしまいました。
和也は所持金3400円しかなく途方に暮れていましたが、売店のおばさんが助け舟を出してくれます。
売店のおばさんは一晩泊めてくれますが、和也に飛行機代は貸さずに青春18きっぷで帰ることを提案します。
和也は、おばさんと別れた後も帰路で出会う人々に助けられ、生きる力を学びながら自宅へと帰っていきます。
◆おすすめポイント◆
喜多川泰さんは先生でもあるので、非常にわかりやすい表現で物語を丁寧に描いているのが特徴的です。
物語の中に予期せぬトラブルや、思い通りにいかないときのヒントが散りばめられています。
大人が読んでも生きていくうえで大切なことを再確認できる作品です。
主人公が出会う大人たちの言葉や行動が心に響きます。
読了後は、親にありがとうと感謝の言葉を伝えたくなりました。
受験や就職試験が控えている人だけでなく
- 一期一会の意味を知りたい人
- 夢を持つとはどういうことか知りたい人
- 働くことの意味を知りたい人
などに読んでほしい作品です。
喜多川泰の作品はどれも学びが多いですが、人生の岐路に立っている人には『手紙屋』という作品もおすすめです。
『傲慢と善良』 著者 辻村深月 朝日文庫
心にグサグサ刺さるミステリ恋愛小説。
テーマは恋愛と結婚と自立。
2019年に辻村深月さんの作家生活15周年を記念して出された作品です。
この作品は、一番心に刺さった小説として大変話題になりました。
◆あらすじ◆
婚活アプリで出会って付き合っている彼女の真美から、西澤架のもとにストーカーに合っているから助けてほしいと電話がかかってきます。
しかし、その後真美は姿を消してしまいます。
彼女はなぜ姿を消したのか。
誰とどこにいるのか?
この二つを知るため架は真美の地元に行ったり、過去に関わった人々に会ったりして育った環境や知らなかった彼女の一面を知ることになります。
読んでいる途中は彼の傲慢さや彼女の善良な態度に不快感さえ感じますが、ラストは暖かい希望の光が射すような感動があります。
◆おすすめポイント◆
ストーリーの中で地方と都会の婚活事情が赤裸々に描かれています。
婚活中の方はリアルな心理描写に共感できる部分が多いかもしれません。
結婚相手に「ピンとこない」と思うのはなぜか?
「ピンとこない」の正体がこの本を読むと分かります。
また、結婚に対しての親と子の依存体質な関係性や価値観のずれにも改めて気づかされます。
私は、親の立場として読んだのですが、子供たちに少し過干渉だったと反省しました。
この本は、これから婚活しようと思っている人だけでなく
- なぜ人は結婚したいと思うのか知りたい人
- 恋愛中で結婚を迷っている人
- 自分の子供が結婚しないことを気にしている人
などに読んでほしい作品です。
現代の婚活の息苦しさと恋愛のわずらわしさを秀逸に描いた作品です。
『博士の愛した数式』 著者 小川洋子 新潮文庫
博士と家政婦とその息子の温かい交流を描くヒューマンドラマです。
第一回本屋大賞受賞された作品です。
2006年には、漫画化、映画化もされ英訳もされています。
2023年には舞台でも上映されました。
◆あらすじ◆
シングルマザーで家政婦の杏子が交通事故の後遺症で記憶が80分しかもたない数学博士の元に派遣されます。
家政婦の依頼をしたのは同じ敷地内に暮らす足の不自由な博士の義姉です。
杏子は、博士の物事を大好きな数字や数式に例えた話を聞くうちに数学の美しさに魅了されていきます。
ある日、杏子に10歳の息子がいることを知った博士は息子を連れてくるように言います。
息子は学校から博士の家に帰ってくることになり、3人で晩ごはんを食べる生活が始まります。
後半に博士の過去に触れる部分では、博士が一番愛した数式が何かがわかりますよ。
◆おすすめポイント◆
本文の中にたびたび数式や数学用語が出てきますが、苦手な人でも問題なく読み進められます。
博士が息子をとてもかわいがってくれて、二人が野球のことを話す微笑ましいシーンは見どころです。
博士の子供に対する愛情深い接し方には胸に響くものがありました。
私もこの作品を読んで子供を大切に育てていこうと改めて思いました。
この作品を特に楽しめるのは
- 数学が好きな人
- 野球が好きな人(阪神ファン)
博士は大の阪神ファンでした。
ただ、1975年の記憶が最後のため昔の阪神の話が出てきます。
数学や野球に興味がなくても3人のやり取りは心を揺さぶる言葉がたくさん出てきますよ。
何度も読み返したくなる作品です。
『山女日記』 著者 湊かなえ 幻冬舎文庫
登山を通して人生を見つめ直していく短編集です。
元々登山の趣味があった湊かなえさんでしたが、作品のために登山を再開し実際に山を登って取材して書かれた作品だと言われています。
2014年に出版され2016年にはNHKBSプレミアムでドラマ化もされています。
湊かなえさんと言えばミステリ小説が思い浮かびますが、この小説は一味違うタイプの作品です。
◆あらすじ◆
山ガールと言えるほど若くはない、仕事や人間関係で悩みを抱えた大人の女性が登山に行って自分を見つめ直し、何らかの答えを出して下山していくストーリーです。
本文に登場する山は
- 妙高山
- 火打山
- 槍ヶ岳
- 利尻山
- 白馬岳
- 金時山
- トンガリロ
それぞれの山ごとに短編で書かれていて読みやすい構成です。
★おすすめポイント★
登場人物の心の葛藤や迷う気持ちに共感できる心理描写が多いです。
悩みでモヤモヤしている人に読んでほしい小説です。
私もこの本に影響されて、山に行ったら何かわかるかもしれないと思い、近くの低山に登りました。
そのとき山頂で食べたお弁当の美味しさに感動してその後も登山を続けています。
アウトドアには、無縁だった私に最も大きく影響した本になりました。
2021年には『残照の頂き 続・山女日記』も出版されていますので、合わせて読んではいかがでしょうか。
『恋文』 著者 連城 三紀彦 新潮社
1984年の直木賞受賞作品です。
5つの短編は、どの作品も切ないラブストーリーです。
人に惚れてるってどういうことか考えさせられる作品です。
◆あらすじ◆
三角関係とも言い難い夫婦と夫の元彼女のお話です。
結婚10年目の夫が突然家出します。
家出には身勝手な理由がありました。
その理由を突き詰めた妻は夫を理解し協力しますが、複雑な気持ちで過ごすことになります。
夫婦と夫の元恋人がどうなっていくのか、繊細な心理描写に読んでいて胸がいっぱいになります。
◆おすすめポイント◆
身勝手な夫と物分かりが良すぎる妻、余命が短いからと言って振り回す夫の元彼女。
常識ではありえない3人の関係を、読んでいるとまったく感情移入できない人もいるかもしれません。
私は読んだ時高校生だったのですが、昔の恋人の余命が短いとわかってしまったら既婚者はどんな行動を起こすのか考えてしまいました。
人に惚れるってどんなことなのか知りたい人にぜひ読んでほしい作品です。
数年経って読み返してみても結末の解釈を考えてしまいます。
また、短編集の中の『私の叔父さん』もおすすめです。
まとめ
今回は、人生観が変わる一生に一度は読むべきおすすめの小説を5冊紹介しました。
- 『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』 喜多川 泰
- 『傲慢と善良』 辻村 深月
- 『博士の愛した数式』 小川 洋子
- 『山女日記』 湊 かなえ
- 『恋文』 連城 三紀彦
本記事が小説を選ぶときの参考になれば幸いです。
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