第57話
【登場人物】
- 菊村 栄・・・石坂浩二
- 有坂エリ・・・板谷由夏
- 名倉みどり・・・草刈民代
- 白川冴子(お嬢)・・・浅丘ルリ子
- 水谷マヤ・・・加賀まりこ
- 白鳥洋介・・・上條恒彦
- 広中しのぶ・・・黒川智花
- アナウンサー・・・中山秀樹
- 三枝奈々・・・東松史子
- 風間ぬい子(秘書)・・・広山詞葉
- 中里 正(保安部主任)・・・加藤久雅
- 進藤秀夫(施設主任)・・・山下澄人
- 宮下一馬(総務)・・・平野勇樹
- 竹芝柳介・・・関口まなと
- 和田亮太
- 佐々木征史
- 山崎千恵子
- 菊池拓人
- 小石周平
- 朝妻 徹
- 古谷朋弘
竹芝柳介の自首
警察関係者に囲まれ竹芝柳介がアパートの一室から出てきて、車に乗せられ警察署へ連行された。
そしてテレビのニュース速報で竹芝柳介逮捕が報道された。
お嬢がマヤと一緒に、竹芝柳介が報道陣に囲まれ警察署に入って行くところを自室のテレビで観ていた。
竹芝柳介をアパートまで送ってきたスタッフの中里と進藤が郷に戻り、みどりに竹芝の自首を見届けたことを報告。
そして竹芝から預かったお嬢への謝罪の言葉を綴った紙切れをみどりに渡した。
その紙には「おばあちゃんごめん 僕は最低です 柳」と書かれていた。
お嬢、柳介への想い
お嬢が柳介からの謝罪に紙切れを見つめていると、マヤが取り上げ「燃やすわよ」と言ってライターで火をつけようとすると、誰かがドアをノックした。
ドアを開けると菊村がおり、お嬢のことを心配してやって来たのだった。
そして再びマヤはライターに火をつけ、「忘れなさいよ。忘れるのこの事は全部」といって紙を燃やした。
するとお嬢は「あんたさあ、子供持ったこと無いからそんな事言えるのよ」とマヤに言ってこれまでの想いを語った。
60年前、17歳で言葉の通じない外国で独りで子供を産み、ろくに子どもの顔を見ることなく取り上げられ、それからしばらくどこか分からないホテルの一室にひと月軟禁された。
それから日本に戻り、女優業に専念することでその事を忘れるようにしていた。
これまで多くの役を演じてきたが、子どもがいる役だけはやったことがなく、女優白川冴子として生きて来た。
ある日映画の受賞式でひとりの男の子を見掛け、その子に話し掛けると「おばあちゃん、僕です。竹芝柳翁の孫の柳介です」と告げられた。
その時全身に電流が走ったような衝撃を受け、白川冴子から17歳の普通の女性小倉信子が甦った。
お嬢は柳介がデビューしてから一度だけ食事をし、そこでお嬢と柳介の関係を彼の祖父柳翁や父でさえも知らないことを告げられた。
誰も頼ることができず、すがる想いで自分の事を頼ってきた孫を追い返すことはできなかったと、涙ながらにマヤに訴えた。
マヤはお嬢の想いを理解し、涙で化粧が落ちてグチャグチャになった顔を拭うようあやした。
お嬢は化粧が落ちるのは嫌と言いながら、また頬をつたう涙を拭い更に顔をぐちゃぐちゃにした。
その様子を黙って見ていた菊村が、「お嬢はまるで子どもみたいだった。そのお嬢の今は年取った顔の向こうに、17歳の何も分からない幼い少女の顔が一瞬かすめた」と心の中でつぶやいたところで、第57話終了。
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