和食の代表ともいえる煮物というと、野菜や魚の煮物を思い浮かべます。
野菜や魚にもいろいろな種類があり、どの野菜も魚もそれぞれの美味しさや栄養価があります。
それらを十分に引き出す煮物を作りたいと思うものの、水の量や味付けが難しいと思われる方もいらっしゃると思います。
・煮物の水の量は、味付け方法や煮る時間によって変わってきます。
煮物の水の量を表すには、「ひたひた」、「かぶるくらい」、「たっぷり」などの言
葉があります。
水の少ない順にすると、「ひたひた」「かぶるくらい」「たっぷり」となります。
・味付けの比率は、黄金比と呼ばれ、調味料の割合を示したものです。
黄金比には、
【水5:しょう油1:みりん1:酒1】
【出汁10:しょう油1:みりん1:酒1】
などがあります。
・煮物は水から煮るかどうかは、根菜類は水から煮て、葉物野菜はお湯から茹でることが基本となります。
煮魚の場合は、「白身の魚は煮汁が湧いてから」「青魚は最初から鍋に入れて」という板前の方もいらっしゃるそうです。
・煮物は水なしでも作れます。
具材の水分と調味料だけで煮るので、しっかりと味が付きます。
それでは、煮物の水の量はどれくらいが良いか、美味しい煮物を作る味付けの比率はあるか、煮物は水から煮るか、煮物は水なしでも作れるかなどについて、もう少し詳しくご紹介していきます。
煮物は、栄養豊富で美味しく、しかもヘルシーなので、いろいろ作ってみたいと思うけれど、水加減など難しそうなので、つい億劫になってしまうという方、是非この記事を参考にしてください。
煮物の水の最適な量はどれくらい?
煮物の水の量は、味付け方法や煮る時間によって変わってきます。
ネットなどでレシピを見ていると、煮物の水の量を表す「ひたひた」、「かぶるくらい」、「たっぷり」などの言葉が出てきます。
料理を作る時に、食材の分量と水の量をちょうどよくするのが「水加減」です。
鍋やボウルの大きさや食材の切り方に合わせて、水の量をちょうどよく加減するという意味で、「ひたひた」、「かぶるくらい」、「たっぷり」などの言葉を使います。
それぞれの水の分量について詳しく見ていきます。
「ひたひた」とはどれくらい?
「ひたひた」の語源は、「浸る」だそうです。
辞書(三省堂新明解国語辞典)で調べてみると、「表面が軽くおおわれる程度に、水の中に入る」とありました。
「ひたひた」の水の分量は、鍋に入れた材料が水から見えるか見えないかくらいの量と言えるでしょう。
一般的な煮物の出汁や水の量はこれくらいです。
「かぶるくらい」とはどれくらい?
「かぶる」を同上の辞書で調べてみると、「顔や頭をおおうようにする」とありました。
「かぶるくらい」の水の分量は、鍋に入れた材料が水の面から出ていないくらいの量と言えるでしょう。
大根の下茹でなど長めに加熱する時の水の量です。
「たっぷり」とはどれくらい?
「たっぷり」の水の量は、鍋に入れた材料より数cm上くらいの量と言えるでしょう。
パスタやうどんを茹でる時に、具材が中で踊るような水の量です。
水の少ない順にすると、「ひたひた」「かぶるくらい」「たっぷり」となります。
煮物の黄金比とは?
煮物の黄金比とは調味料の割合を示したものです。
黄金比には、出汁を使う物と使わない物があります。
出汁を使わない黄金比
【水5:しょう油1:みりん1:酒1】
出汁を使わないで水から作る煮魚などに適しています。
煮魚は煮込みながら魚の旨味が溶け出すので、魚の味わいを感じることができます。
しかし、鰹節や昆布の出汁を使ってしまうと本来の魚の旨味を消してしまうので、煮魚は水を使って煮ます。
魚の鮮度や脂ののり方の状態を見て、「黄金比+砂糖+生姜汁」で魚の臭みを消します。
この黄金比で作ると美味しい煮魚は、カレイ、タラ、タイ、キンメダイなどの白身魚が主たるものです。
出汁を使う黄金比
【出汁10:しょう油1:みりん1:酒1】
野菜の煮物の基本となる黄金比です。
この黄金比で野菜を煮ると、野菜本来の風味を生かした美味しい煮物になります。
野菜の鮮度や味によって、砂糖を使用することも可能です。
また出汁は、鰹節と昆布でとったものが望ましいですが、顆粒出汁を使っても美味しい煮物になります。
この黄金比で作ると美味しい野菜は、大根、里芋、肉じゃが、お浸しなどです。
大根や里芋は、中心まで火が通りにくいので、煮る前に予め下茹ですることが必要になります。
出汁を倍の20にすると、寄せ鍋やおでんを作る時にちょうど良いです。
甘めが好きな人、辛めが好きな人、それぞれですので、黄金比にプラスマイナスして自分流にアレンジするのもよいでしょう。
煮物は水から?それともお湯から煮る?
煮物を水から煮るかお湯から煮るかは、野菜を使った煮物か、魚を使った煮物かによっても、違いがありますので、別々に見ていきます。
野菜を使った煮物
根菜類は水から煮て、葉物野菜はお湯から茹でることが基本となるでしょう。
つまり、野菜が土の上に育つか下に育つかで変わります。
昔から、「根っこのものは水から」という言葉がありますが、野菜にどのように火を通すかで決まります。
➀根菜類
大根やじゃがいもなどの根菜類をお湯から茹でようとすると、外側だけが先に柔らかくなり中側に火が通るのに時間がかかってしまいます。
中まで火が通った頃には煮崩れしてしまいます。
水から茹でることでじっくり火を通し、外側と中側との温度差ができないようにします。
②葉物野菜
葉物野菜やアスパラのように土の上の野菜や、根っこの野菜でもサッとゆでて食感を残したいものは、お湯から茹でます。
お湯から茹でることでお湯の温度が極端に下がることを防げるので、青臭さをとったり、少し柔らかくして食べやすく色鮮やかにしたりするために適しています。
もし、葉物野菜を水から煮たら、くたくたになり食感が悪くなるだけでなく、豊富に含まれるビタミンCは水に溶けて流れ出てしまいます。
火の通りにくさが違う野菜を使う煮しめなどは、別々に煮てから合わせるとどの野菜もちょうど良い仕上がりになり美味しいです。
魚を使った煮物
煮魚を作る時にレシピを見ると、魚を入れるタイミングとして、「冷たい煮汁から」と「沸騰した煮汁から」の両方があります。
プロの板前さんは、「白身の魚は煮汁が湧いてから」「青魚は最初から鍋に入れて」という人もいらっしゃるそうです。
魚は種類によって水分の量や身質に違いがあるそうです。
水分が少なく身質が硬い白身魚は、身崩れの心配が少ないので煮汁が湧いてからでも大丈夫ということです。
逆に水分が多く身が柔らかい青魚は、身崩れしやすいので冷たい煮汁に最初から入れて煮るとよいということです。
煮魚を作る時に、「冷たい煮汁から」と「沸騰した煮汁から」のそれぞれのメリットをまとめてみます。
➀冷たい煮汁から魚を煮るメリット
・アルコールの力を活用
魚を煮る時に入れる酒やみりんに含まれるアルコール分は、魚の臭みを取る、魚の旨味を染み込みやすくするという働きをしてくれます。
沸騰させることでこのアルコール分は飛んでしまうため、この力を活用できなくなります。
・煮崩れしにくい
煮立った煮汁の中に魚を入れると魚が躍ってしまい、煮崩れしやすくなります。
少なめの冷たい煮汁で落し蓋をして弱火で煮ることで、煮崩れしないで見栄えも良く仕上がります。
・「霜降り」のひと手間で魚の旨味が逃げない
「霜降り」とは、魚の鱗やぬめり、内臓を処理してから熱湯を入れたボウルに魚をくぐらせて、白っぽくなったら流水で洗う下ごしらえのことです。
この「霜降り」をすることで、魚の汚れや臭みが取れて、味がしっかり染み込んで美味しい魚の煮物が作れます。
②沸騰した煮汁から魚を煮るメリット
・魚の旨味を逃がさない
魚を熱い煮汁に入れることでたんぱく質が早く固まって旨味を閉じ込めてくれるので、旨味が逃げません。
煮魚はスープではなく、魚そのものに味を付けて味わう料理です。
沸騰した煮汁で魚を煮ると、旨味が煮汁に溶け出すことを防ぐことができます。
ただし、強火で煮続けると旨味が逃げてしまうので、気を付けましょう。
・魚の臭みを出さない
魚の臭みが苦手なので、魚料理は嫌いという人も多いと思います。
魚に含まれる旨味成分が分解されて生臭さに変わるのですが、沸騰させてから煮ることで、この旨味成分を閉じ込めて生臭さを出さないで済みます。
結局、煮魚は水から煮ても沸騰させてから煮ても、どちらでもよいのではないかと思います。
メリットを知った上で、自分で作ってみて美味しいと感じた方でよいのではないでしょうか。
水なしでも煮物は作れる?
結論から申しますと、水なしでも煮物は作れます。
具材の水分と調味料だけで煮るので、しっかりと味が付きます。
水なしで作る煮物の簡単な作り方やポイントをいくつかお伝えします。
かぼちゃの煮物
・かぼちゃが重ならないような鍋やフライパンを使って作る。
・煮汁が少ないので弱火で調理する。
・3~4cm角に切ったかぼちゃ(1/4個)を鍋に入れたら、砂糖(大さじ1)をかけて鍋をゆする。
・そのまま30分ぐらい置く。
・しょう油(小さじ1)、酒(大さじ1)、みりん(大さじ2)を混ぜる。
・時間が経過したかぼちゃの皮目を下にして、混ぜておいた調味料を入れる。
・そのまま蓋をして15分弱火で煮る。
・15分経過したら竹串を刺して火の通り具合をみて、固ければ少しずつ加熱する。
私は、いつもかぼちゃの煮物を作る時には水から煮て、柔らかくなったら調味料を加えていました。
上記のように、水なしで作ってみた所、煮汁は少ないですが弱火で煮たので焦げることもなく美味しくできました。
肉じゃが
・水も出汁も使わないで作る。
・牛肉薄切り(150g)を一口大に切り、玉ねぎ(1個)はくし型に、人参(1本)とじゃがいも(中2~3個)は乱切りにする。
・鍋にサラダ油(大さじ1)を熱して、牛肉を炒め、砂糖(大さじ1~2)、しょう油(大さじ2と1/2)、酒(大さじ1)を入れる。
・玉ねぎ、じゃがいも、人参を加え、中火で蓋をして煮る。
途中で底からかき混ぜ、火加減も調節しながら20分程煮る。
煮魚(カレイ)
・水を使わないで、強火で仕上げる。
・カレイ(4切れ)にお湯をかけて霜降りをし、臭みを取る。
・フライパンに、日本酒(150cc)、みりん(50cc)、しょう油(50cc)きび砂糖(大さじ1)を入れる。
・強火のままで、アルミホイルで落し蓋をし、13分加熱する。
水を入れすぎた!水っぽいときの対処法やリメイク方法
煮物を作っていて、焦げないようにと思い水を入れすぎて、水っぽくなってしまうことがあります。
そんなときの対処やリメイク方法をお伝えします。
煮物が水っぽいときの対処法
➀煮物に高野豆腐を入れる
多すぎた煮汁がちょうどよい量になるくらいの高野豆腐を入れます。
煮汁を吸ってくれ、しかも具材が増えるのでおすすめです。
②煮物に麩やはんぺんを入れる
煮汁の吸い取りは高野豆腐ほどではないですが、煮汁を吸ってくれるので高野豆腐が手元にない時などには活用できます。
煮汁が水っぽいときのリメイク法
➀多かった煮物の煮汁を別の鍋に取り、好みの具材を入れ、卵とじにする
私は残った煮汁に、高野豆腐や玉ねぎ、ほうれん草などを入れて、卵とじにします。
②水っぽいかぼちゃの煮物を、かぼちゃのポタージュスープにする
かぼちゃの煮物を潰して牛乳または豆乳を加えて温め、こしょうを振ります。
味見をして、薄味だったら塩・こしょうで調整します。
③筑前煮をけんちん汁にする
鍋に煮汁とだし汁を入れて、火にかけます。
具材がたくさん残っていれば大き目な具材は適当な大きさに切り、具材も一緒に入れます。
具材が少なければ、豆腐などを足します。
沸騰したら、しょう油(適量)を加え、味見をして薄ければ塩で調えます。
まとめ
煮物の水の量や味付けの比率には決まりのようなものがあるのか、煮物は水から煮る方がよいか、水なしでも煮物は作れるかなどについて、お伝えしました。
- 煮物の水の量は、鍋やボウルの大きさや食材の切り方に合わせて、水の量をちょうどよく加減するという意味で、「ひたひた」、「かぶるくらい」、「たっぷり」などの言葉を使います。
- 煮物の黄金比とは調味料の割合を示したものです。
出汁を使わない黄金比【水5:しょう油1:みりん1:酒1】は、水から作る煮魚に適しています。
出汁を使う黄金比【出汁10:しょう油1:みりん1:酒1】は、野菜の煮物に適しています。 - 根菜類は水から煮て、葉物野菜はお湯から茹でることが基本となります。
煮魚では、「白身の魚は煮汁が湧いてから」「青魚は最初から鍋に入れて」というプロの板前さんもいらっしゃるそうです。 - 水なしでも煮物は作れます。
具材の水分と調味料だけで煮るので、しっかりと味が付きます。 - 煮物が水っぽいときの対処法は、煮物に高野豆腐などを入れて煮汁を吸わせます。
- 煮汁が水っぽいときのリメイク法は、卵とじやポタージュスープ、けんちん汁などにすると別の一品として美味しくいただけます。
煮物料理は基本の黄金比を覚えて、そこにお好みでプラスマイナスすれば美味しい味になります。
また水加減、火加減にも気を配って、煮物料理を得意料理にできるようにこの記事を役立ててもらえたらうれしいです。
コメント